思春期ってあるだろ?ちょうど僕のちんちんに毛が生えてきた時だ。父ちゃんや今の僕みたいに、陰毛なんてウジウジしたみっともない名前が、嘘みたいにたくましい陰毛じゃない。
正真正銘本物の陰毛だ。
昔、僕たち家族は、キャンプ場に併設された銭湯に入った。
父ちゃん、兄ちゃん。なんかごめん。僕は子供なのか大人なのか分からないちんちんがすごく嫌で、タオルを腰に巻いた。
いやぁ、ご立派!父ちゃんと兄ちゃんには適いませんなぁ!なんて顔はあの時の僕には出来なかった。
きっと僕の身体の変化を見て二人は笑ってるんだ。ほら、あそこのおじさんだって、僕の産まれたての陰毛を見て笑ってるに違いない。
温泉特有の熱めな温泉に肩まで浸かりながら思っていた。
僕は卑屈だったんだ。
そんな時だ。旅の恥は掻き捨てってことわざがあるでしょ?このことわざを思いついたんだ。
昔のバク売れことわざ師が出先の風俗で考えたと世の中は思ってるかもしれないけど、あれは僕の経験と思春期が産んだ僕の作品なんだ。
きっとロストテクノロジーで作られた、AI五右衛門とかいう木製の機械に、僕のことわざを権利ごと盗作されたに違いない。
ことわざに勇気をもらった僕は腰に巻いたタオルを外した。
フルチンで頭を洗ってフルチンで身体を流しフルチンで脱衣所の扇風機に当たった。
気持ちよかった。ちんちんが外界に触れて。粗末なちんちんをみんなに見られて。
心のATフィールドが無くなったような気持ちになれた。人の目が怖くなくなったんだ。
思春期を超えた僕は強くなった。
骨格はどんどんとガッチリして行き、上腕のあたりにも筋が入った。ちんちんの毛もどんどんボーボーになって行った。
最強、無敵、勝ち、ボス、4倍攻撃、ぶっ飛ばす、僕は強い言葉を覚えていった。
僕は正真正銘の男になった。
舞台は裏TOKYOまで一気に進む。
僕はこの世界で最弱だ。ザコ、負け、土下座、足舐めます、4倍でぶっ飛ばしてください。
こんな事ばっかり思っている。
でも旅の恥は掻き捨てなんだ。旅って人生も旅みたいなものだろう?
恥は掻いて捨てよう、人の目なんか気にしてちゃ駄目なんだ、優しさなんて嘘だ。
鑑真は飛び膝蹴りでムカついたやつの顎を破壊して回るし、チェ・ゲバラは完全な利己心で革命を起こしたし、千利休は茶室でコソコソと薬と酒に溺れてる卑怯者だ。
訳も分かんねえ奴らに優しくするのはもうやめだ。僕は壊すぞ。
明日はバイトだけど休んでやる。僕は僕の革命をこの街で起こしてやる!見てろバカ!