ヒキズる日記

ずっと引きずってます。

用法容量を守って正しくビームを撃ってください

「ビーーーーーィム!」

沈黙の帰り道をしばらく二人で歩いていた時、同僚の花江未來は僕にハートマークのビームを放った。

花江の目はバシャバシャとバタフライで泳ぎ、まばたきもパタパタとbutterfly!!させていた。

ビームか、飲み会でお互い上にケンケン言われたあとの沈黙を破るには良いカードだと思った。

ビームにしても色々あるし返答に迷った。ノロノロになるビームとか、人の悪の心が膨れ上がって爆発してしまうビームとか。とりあえずどんなビームなのか確認しておこう。

「なんの?」

「え、好きになる?みたいな?」

「え?好きな相手が撃たれると石になる的な?」

「うーん、そのビームだとしたら失敗かもしれない。」

「なるほど・・・」

これは、気まずいぞ。どうやら僕は変な告白をされたらしい。花江、多分それは考えすぎだ。考えすぎて変な方でやっちゃってる。あー!(笑)告白ってこと?分かりやすく言えよー!(笑)だと僕が補完をしすぎてまるで花江がスベってるみたいになるじゃないか。かれこれ10数秒はビームを撃った銃口を仕舞えていない彼女が可愛そうになってきた。ここは冷静に話を進めてみよう。

「ビーム外しちゃったんじゃない。」 

「神田くん、これもう一回・・・やるの?」

しまった、これじゃあカバーになっていない。例えば渾身の一発ギャグを、ん?(笑)聞いてなかった(笑)と言われるようなものじゃないか。しかし、今更普通の告白というのも違うのだろうし。つまり、付き合ってくださいって事。とでも言ってくれれば良いのだが、それではあまりにもロマンが無くなってしまうので言い出しづらいのだろうか。心なしか花江の銃口が微かに震えている。花江、お前に銃は似合わない。しかし、一度人に向けた銃口を下げるのも違うと思うんだ。その銃で俺を射抜くしか方法は残されていない。

「まあ、もう一回撃つ・・・感じかな。」

「このままもう一度こう・・・撃つ、感じかな。」

「いや、連射は違うんじゃないか。ほら、アクションビームとかポーズ込みで必殺技的な所はあるし。」

「アクション、ビーム?」

クレヨンしんちゃんの。」

「しんちゃん?がビーム?」

撃つわけないだろ。まさかこいつ、クレヨンしんちゃんを知らないだと。この歳までクレヨンしんちゃんを知らないでいる方が難しいぞ。

「いや、しんちゃんは5歳児のお尻出すあの。」

「お尻から、ビーム?」

出るわけないだろ。それはうんこだ。

「お尻は出すけどお尻からは出てなくて。」

「うんこ、ってこと?」

「うんこはビームじゃないだろ。」

「そもそも、5歳児がビーム?」

「いや、その子が見てるアニメのキャラの。」

「アニメの中の、アニメ?」

もうアクションビームの話はいいよ!俺が悪かったよ、数あるビームからアクションビームを選んだ俺が悪かった。

「とにかくもう一回ポーズからやり直そう。」

「でも・・・恥ずかしい。」

それはそうだろう。かれこれ5分はこうしている。もう戻すタイミングを失ったという事なのか、花江はずっとビームの体制を崩さない。

「そうだな・・・ならさっきのシチュエーションをやり直そう。一回また歩き出して、準備が整ったらアクションで行こう。」

「アクションビーム?」

「もうアクションビームはいいよ。映画のアレだよ、よーい、アクション!の方だろ。会話の流れで理解しろ。」

花江は、子鹿のように震えていた足の緊張をようやく解いた。腰はクッと反り、片足のつま先を立て、振り向きながらビームを撃つ。頭の中で一連の流れをおさらいしていると、僕の顔まで赤くなってきた気がする。とりあえず歩き出そう、僕の前を花江が歩いていたから僕はその後を付いていく形だ。

「改めてだとやっぱり恥ずかしいなぁ。」

そうだろうな、僕も恥ずかしいしお互い様と思って頑張ろう。

「いやぁ、変に緊張するね。」

ん?どうした。早く歩き出せよ。

「ていうか、ここらへん飲み屋多いね。神田くん、ここらへんは詳しいの?」

花江?お前まさか、やりたくないのか?それはイタズラに僕らの関係性にもヒビが入れただけの行為になってしまうぞ。花江行け、安心してビームを放て。好きになってもうたー(笑)ぐらいは言ってやるから勇気を出すんだ。

「どうしたの?行かないの?」

こいつ、僕が前を行くということがどういう事か分かっているのか。機会を失うぞ、先程の感じでやるとしたら花江から歩き出すべきだ。

「いや、でも。」

「ほらほらぁ。」

花江が背中を押してくる。仕方ない、花江は特に歩き出しの順番は気にしていないのだろうか。僕を抜かし、ビームを放つ。幸いまだ駅までは距離があるし、それまでに撃つという事だろう。

「この歩いてる時間がなんとも言えないね。」

「確かにね、なんかギクシャクする。」

「でもドキドキするなぁ。」

花江は目を閉じながら手を合わせた。乙女の顔とでも言うのだろうか、程よく紅潮した頬が街頭に照らされて眩しい。

しかし、なんだこの違和感・・・

「神田くんの・・・ビーム♡」

やられた!花江は僕を抜かさないつもりだ。振り向き様にビームを撃つ構造上僕がビームを撃たなければいけない。逆転、立ち位置と共に立場まで逆転してしまった。食えない女だ、緻密な計算の元僕をはめた。この女、できる!

しかし、僕だってあの様な無様な告白はしたくない。第一僕だったら普通に告白していたし。そう思えば思うほど、あんな他人任せな告白をしてきた花絵にムカついてきた。ここはキョトン顔で「俺、ですか?」という感じに茶を濁そう。大丈夫だ、僕なら可能だ。

「俺?(笑)」

ダメだ!ヘラヘラしてしまった!この言い方だと照れと取られていても何ら不自然ではない!

それに否定から入らなかった事により、僕がビームを撃つ感じがより顕著になった。いや、考え方によれば男である僕を立てたという意味合いにも取れる。気の使える花絵の事だ。いや、ビームで告る女は気を使えないだろ!

しかし、花江は僕からのビームを待っている。コクリと頷いたまま、俯いている態度が僕からのビームを心待ちにしている何よりの証拠。

良いだろう、花江。お前のその考え『あえて』乗ってやる。花江、僕はお前を大事にする。だから食らえ!僕の全身全霊を込めた本気のビームを!

「ビーーーーーーーーーーーーーィムッ!!!!!」

「うわぁー!(笑)」

「いやぁ、へっへ、へへっへっへっへへ(笑)」

うん、ここからどうする?????

 

冬の銭湯の秘密2

週末の仕事終わり、僕はあの銭湯に行く事を決めていた。彼女に聞いてみると、デート中は変な所はなかったらしい。どうやらこの、頭で考えていることが口から出ちゃう現象?はあの日電車に乗ってから発症した変な病だと考えられる。

会社でも怪訝な顔をされるし、喧嘩も多くなった。明らかに以前と比べても居心地が悪いし、直せるのならば直したい。

病院でCTを受けた。どうやら脳に異常は見られなかったらしい。ホッとしたが、異常が無い事が逆に恐ろしい。

精神科医の先生はストレスによる心身症の一種だと言った。きっと一時的なものだと言い切りアスペルガー症候群の薬を処方された時は、無限に広がる暗闇に叩き落されたような気分だった。

ゆっくり温泉にでも使ってきたらどうですか?と言われたので、僕は先週のおかしな銭湯に行く事を決めた。変なお客ばかりだったし、時間はかかるが京王線一本であの景観の良い銭湯に行けるのはありがたい。

この脳内独り言も全て電車中に筒抜けなのかなと考えると恥ずかしいが、思考を回しておかないとエッチな女性を見た時にエッチだー!とか言ってしまってすごく気まずい。今週はそれを12回はやらかしている。

乗員は僕を怪訝な目で見つめている。あまり表立つ仕事じゃなくて良かったなと思う。もしも状況が違っていたのなら、深く考えるとため息が漏れる。

次は、代田橋代田橋。というアナウンスと共に扉が開く。数名の乗客が降りると入れ替わりで、数名が、うおー!エッチだー!エチが!クソ!何でこんなときにあんなにエッチな、クソ!エッチすぎんだろ!くそっ!くそっ!くそっ!

 

しばらく電車に揺られていると乗客もまばらになってきた。週末だからか、一緒の目的地を目指している乗客も多い。何やら怪しげな連中が数名車両に残っていた。

次は高尾山高尾山、終点です。という聞き慣れないアナウンスで扉が開いた。

数名の乗客が降りる、怪しげな連中に紛れて僕のようにスーツを纏ったサラリーマンもいた。違わないのは全員が僕の独り言を哀れみの目で見てくることだけ。

館内に入り、券売機でタオルを購入し、爽やかなお見送りと共にタオルを受け取った。

以前来た時は目につかなかったが、館内は多少賑わっているようだった。しかし、何かが足りない、または社会的に足りていなさそうな人達。僕も今や一員と考えると胸が痛む。

以前来た時と同じ、711と書かれたロッカーに衣類を詰め込んでいると、先程同じ電車から降りたサラリーマンが話しかけてきた。

「厄介な病ですね。」

あぁ、僕もそう思う。会話をこの一週間で覚えた。しかし、必要のない事まで口をついてしまうことがネックだが。

「ハハッ、本当に厄介だ。」

軽口を叩くこの男が好きになれなかった。こんな事を考えている事も相手に筒抜けなのが社会人として申し訳がない。

「大丈夫ですよ、よく言われます。僕がどんな欠陥があるか気になりませんか?」

聞いてもいないのに男は語りだした、と言うよりもフェアプレーがこの温泉のルールなのかもしれない。

「一応暗黙ですがそうですね。一目で分かる人がほとんどですが。」

で、何なんだ。お前の病気は。気にならないが聞いてやる。

「これですよ。」

と言うと男はシャツのボタンを外した。Tシャツも脱ぐと、包帯で体をぐるぐるに巻いている。デカイ生傷があるのだろうか。痛々しいのは苦手だ。

「痛々しいか、違う意味でそうかもしれません。」

なれた手付きで包帯を外していくと、コンプレックスの正体が徐々にあらわになっていく。え、ちょ、デッカー!!!何これ!嘘これ!デカー!!!!!

「俺、男なのに乳首が超デカイんです。」

新玉ネギのようにバカ腫れた乳首に仰天していると、男は意に介さずスラックスを脱いでいた。

「慣れたもんですよ。最初は恥ずかしかったんです、これを理由に学校ではずっとイジメられていましたし、それが理由で不登校になったりして。」

この温泉に通うようになってから、顔見知りは驚かなくなってきて自信が持てるようになったのか。そういう効能もこの温泉にはある事が分かった。

「はい、色々な人が相談に乗ってくれまして。」

傷の舐めあいはどんなカウンセリングを受けるよりも良いのだろうな。ファイトクラブでも不眠症の奴がね、通ってたよね確か。あ、ファイトクラブの延滞ヤバいな、これ帰ったらすぐ返しに行かないとやべーな。

「ハハッ、なんか面白いですね、そちらの病気も。人の脳内ってこんな感じなんだって。」

笑い事じゃない。僕が延滞料金とエロい事しか基本的に考えていないのがバレてしまう。

「ままっ、入りましょう。積もる話は露天で山でも見ながら。」

風情が分かる男で安心した。乳首は慎重にかけ湯で乳首を洗うと、タオルで股間を隠しながら露天に向かった。隠す方逆じゃね?と思ったが口に出すのはやめておいた。

「口出てますよ。」

冷えた石畳をつま先立ちで歩いていると、効能でツルツルになった地面に滑り転びそうになる。

「危ないっ!」

乳首が僕の独り言に反応し、振り向いた。ざりっ!遠心力で振り回された乳首を木の柱が削った!

「あああああああぁ!!!!!!!」

乳首ー!乳首が更に赤く、大きく、宛らバスケットボールの様に腫れ上がった乳首を僕は見ていられなかった。しかし、寒さには耐えきれず僕は露天に浸かることにした。

「ちょっとー!もっと心配してください!」

苦悶の表情を浮かべながら湯船に乳首が浸からないように、ゆっくりと浸かる乳首。この乳首はあだ名の方の乳首で本当の乳首とは違う乳首で。

「あんたさっきから乳首の事しか考えてねえな。」

そういえば先週来た時に、ヤクザの二人組が素敵なサウナがあると話していたが、どのようなサウナなのだろうか。

「別に特別変わった所は無いですが、強いて言うなら相談所兼サウナって感じでしょうかね。」

サウナと言えば黙々と入るイメージだが、僕は乳首を置き去りにし、サウナへと向かった。

「俺も行きますって!」

最近トレンドの交互浴というのにも興味があった。整うという感覚に期待を膨らませ、サウナの扉を開くと心地よい熱風が体にまとわりつく。

中にはガリガリにコケた老人が一人いるだけ、既に骨と皮だけのような体表には汗の一滴もかいていない。

「いつものことながら大丈夫ですか?」

セブンアップ飲むから大丈夫だー!」

ポーションじゃないんだから、死んじゃいますって。」

フェニックスの尾って自販機で買えるっけ?

「死んでねー!それにしてもお喋りなやつが入ってきたな!座れここ!ここ!座れ!まぁ座れって!」

息継ぎをしない野暮なジジイだと思ったが、僕は口を紡いだ。

「いや、口紡ぐの遅いですよ。」

「乳首の!お前も座れ。」

「その、鋼の!みたいな呼び方やめてくださいよ。」

この人はどのようなハンデを背負っているのだろうか。この温泉になると他人のコンプレックスが嫌でも気になってしまう。

「結構ズケズケ来るなお前!俺とお前似た病気かもな!」

似た病気?

「対人依存症だってさ、人を見かけると何処でも誰にでも話しかけちゃうらしい。」

なるほど、こんな銭湯でもなければ異常なのかもしれないなと思った。しかし、この不自然な環境ではあまりにも自然すぎて病気とも思わない。

「嬉しいこと言うなぁお前!こいつは?」

「何ですかねー。思った事を全部口に出してしまう病気?アスペルガー症候群ってやつですか?」

僕も最初はそう思った。精神科医には一部はそうかもしれないが、余りにも症状が重すぎると言われた。ストレスや一時的なショックが原因とは言われたが、この症状に見舞われた際のストレスの方が遥かに大きい。

「めっちゃ喋るなこいつ!これが全部心の声って事か?」

「多分そうです。」 

「俺は普段何も考えてないからなぁ、言いたい事は脊髄反射で言っちまうからよ。」

「虫ですよ、ほぼ。」

「テメーの方が虫の腹みてえな乳首してるだろうが!」

「傷つくっ!」

腐りかけのトマトの様な物体を携える乳首を僕は、大変不憫に思っていた。キモっ!

「憐れむのか蔑むのかどっちかにしてください。」

「で、お前はそんな事を以前から考えていながら生活していたと。」

誰しも本音と建前はあると思うが。

この爺さんを見ていると僕は人よりも思考が多いのかもと思うようになってきた。

「随分多いと思うぞ。まあ、ここに通って色んなやつと話してみろよ。ここでならストレス無く心の中開かせるだろう?」

確かに、以前来たときもそうだったが、この温泉でストレスを感じた事は無いな。てかサウナあっつー。

「確かに熱いですね。乳首が塩で擦れてズキズキしてきました。」

お前はもう少し乳首以外の事を考えろ!

「じゃあ出ます。また!」

「じゃあな!」

サウナを出ようとする足が覚束ない。ヨレヨレになりながら水風呂で桶を組み上げる。手、腕、肩と心臓に近づけながら水を被ると、火照った体から体温を奪われていく感覚が楽しい。

水風呂には先客で手が無い人が肩まで浸かっていた。覚悟を決め、体温を逃さないように両脇を抑えながらぬるりと入水した。

隣ではキャ!とか、あっ!とか言いながら乳首が乳首で遊んでいる。

「いや、別に遊んでるわけじゃ。」

少し恥ずかしそうだ。

「やめて!」

口から冷気が出るのを感じる。あっ、頭の中でゴーン!ゴーン!と鐘を鳴らされているような感覚が心地良いんだ。あー、徐々に水に慣れてきて気持ちいい。極限を見極め水風呂から上がると、心臓が暖かい血液を全身に巡らせた。近くに椅子があったので座る。浴室の湿気が心地よく、心臓が一つ鳴る事に体が体温を取り戻していく。頭はトリップ寸前だ。目を瞑り視界を遮ると、

 

あー、気持ちよかった。なんだか途中から思考が途切れたような気がする。

帰りの電車では爺さんから言われた事を考えていた。流石に色々な人間の相談を聞いているだけあって聞き上手だった。

弱者の為のストレスの無いぬるま湯の心地良さを味わった僕は次は回数券を買おうと、財布を握りしめながら決意していた。

 

 

冬の銭湯の秘密

京王線高尾山駅に並列する銭湯は、登山客のもう一つのメッカだとテレビで見た記憶がある。とくに秋頃にはふもとに並ぶ屋台の活気もさることながら、露天風呂から見る高尾山は、それはそれは切なくも大胆な赤みを孕んでいて大変美しいだとかどうとか・・・そんな話も聞いたことがあるような無いような。

そんな秋の書き入れ時も過ぎた頃、登山客も絶え近隣に民家の一つもないその銭湯は、情景と思い出と共にしばらく存在を消してしまうらしい。その蜃気楼の様な冬の秘湯には、何やら秘密があるらしいとか無いだとか。

 

新宿でデートをした帰り道、僕はずいぶんと電車で寝過ごしてしまったようだ。

彼女とは年が7つも離れているからか、趣味もルールも何一つ分からない。それでも一緒に居たいのは果たして顔なのか相性なのか、顔なのか、顔なのか。何もかも分からずに乗り込んだ電車はゆりかごの様に優しく、僕を安眠させた。

終着駅で駅員に起こされると、来たことの無い駅にたどり着いていた。駅員は早く降りろと言わんばかりに、怪訝な顔で僕を見ている。

この列車は高尾山駅行きです。とは駅員のアナウンスでいつも聞いてはいるが実際に来てみると、これがいつもあいつが言ってるあの・・・みたいな気分になる。まぁ少し興奮してるということだ。

明日は仕事だったが、何となく周辺を散策してみることにした。改札にスイカを通すと割と金を持っていかれ、帰り道が少し心配になった。冬の山は都会とは違った寒さがあり、少し後悔がこみ上げた。

しかし、テレビで見るよりも高尾山は山だ。見渡す限りの山々は都心で見る長方形のビルよりも安定感がある。

改札から1分ほどウロウロしていると、銭湯についた。趣きのあるいい外観だ。

外には白いバンが3台、高そうな車が2台止まっている。時計に目を向けると、終電までは結構時間がある。雰囲気もある。あと寒い。僕は自動ドアの前に立っていた。

ロッカーに靴を預け、百円玉が要らないタイプのロッカーだと気づかずに財布をしばらく漁った。

券売機でタオルと入浴券を購入し、フロントに渡すと気持ちいい見送りと一緒にタオルも頂いた。

久し振りの銭湯に小躍りしたくなる気持ちを抑えていた。抑えきれずにちょっと踊っていた様な気がする。

男と書かれたのれんをペンペン!とはたきながら前屈みでくぐる。僕はよっぽど浮かれているらしい。

711と書かれたロッカーに衣類とカバンを放り込んだ。いつも思うがロッカーの数字は何であんなに大きいのだろう。ロッカーの数はせいぜい50程しかないのだが。

でもこういう事はあまり調べない様にしている。大抵が、ムズムズする様な当たり前の様な理由だったりするからとにかく気持ちが悪い。変なところで几帳面なのだ。ちなみにロッカーの衣類はぐちゃぐちゃ。

風呂の戸をガラガラと開ける。立ち込めた湯気に、凍てついた耳が体温を取り戻し始めた。かけ湯で体と尻を流し、その足で露天に向かう。濡れた石畳につま先が凍った。

あと、気づかなかったがお客さんが割と多いことに気がついた。外気浴をしているおじさんは肩に墨が入っている。4つ並んだ椅子に入れ墨が2人。手や足がない人が2人。向こうのベンチには2人入れ墨が。計6人の曰く付きがいた。

止まりかけた思考を寒さが無理やり動かした。とりあえず近くの露天風呂に逃げ込むと片耳の男と顔に無数の傷をたくわえた2人の悪い奴がいた。多分もう、悪い奴だろう。

半ば飛び込むように入った風呂はとても温かい。顔にお湯が跳ねたのか、僕の前で風呂に浸かっている片耳の男は顔をしかめた。

「ハハッ」と僕の斜め前にいる傷の男が笑った。それにしてもお湯が温かい。効能で肌がヌルヌルしたので、きちんとした温泉なのだろう。

「きちんとした温泉なのだろう。じゃ無くて!飛び込むんじゃねえよ、迷惑だろ?」

片耳の男はどうやら気を悪くしていたようだ。しかし、極寒の露天風呂に少しだけはしゃいでしまう気持ちは片耳でも理解はできるであろう。僕は、軽く会釈をすると共に顔をバシャバシャと湯船で洗った。

「何だお前、あれ?何なんだ?俺か?片耳の男って俺か?」

「多分、そうですよね?まあ片耳ですから。」

「でも言うか?目の前で。」

?なんの話をしているのだろうか。

「お前の話だし、何で説明口調なのこいつっ!」

片耳のくせに何の話をしているのだろう。僕は顔をしかめた。

「片耳のくせにってなんだ!なんかこいつムカつくんだけど。顔をシカメたって言ってからシカメるの、すげームカつくんだけど!」

すると傷の男が。

「するとって、え?なに、俺っすか?なんか喋らなきゃだめ?」

と、何だか訳も分からない事を言った。

「お前が振ったんだろうが!どういう状況だこれ!」

片耳はのぼせているのだろうか。

「のぼせてんのはてめえの頭だ!」

頭がプチトマトの様に真っ赤に熟れていた。

「普通のトマトで良くねっ!」

「多分この子、考えてる事が全部口に出ちゃうんじゃないすか?たいぶアホの子ですよ。」

突然何を。僕は素っ頓狂な事を言う彼に対して顔をしかめた。

「なんでわかんないの?バカか、バカなんだよな!このバカがっ!」

顔をしかめつつも、

「おめーは顔シカメたいだけじゃねえか!」

今起きている現象を確かめる様に心の中で、税金払え。と呟いてみた。

「決めつけんな!払ってねーけどっ!」

「先輩、納税してないんすか?駄目っすよ怒られますよぉ?」

「いいんだよー、先代がいいって言ってたもーん。」

「それで先代がパクられたから、そういうのキチンとしなきゃって頭が言ってたでしょー?」

「いいもーん、税金も家賃も延滞料金も知らないもーん!」

「ええっ!この間のトレインスポッティングまだ返してないんですか!やばいですってそれは!」

延滞料金は支払わないと取り返しの付かないことになるという事を僕は知っていた。

「ほら!この子もこう言ってるし。」

2万円で見たレオンを僕は忘れないだろう。

「2万円ですって!ほら、早くしないとこの子みたいになっちゃいますよ!」

チルダが花持って、えっとー。

「忘れてんじゃねえか!もう踏み倒すからいいっ!」

ぐるりと露天を見渡してみても、ヤクザやそなわってない方ばかりのようだった。普通の人間のいない銭湯に心細くなる一方で、どういったコミュニティーなのか少し気になった。

「ここら辺は登山客以外に人が来ないから、冬は曰く付きが集まるんすよ。」

妙な集まりに戸惑いながら、健常な自分が入って良いものかと少しだけ場違い感を覚えた。

「お前も充分妙だよ。」

「外傷に効きますし、景観も良いし、何よりサウナが最高でね、週1で通ってるんすよ。」

今日は日曜か。彼らは一見して強面だが、優しかった。ヤクザという人種は、僕らが想像しているよりも大分穏やかなのかもしれない。

「お前・・・」

レオンもう一回借りよう。と思いながら僕はゆで蛸のように赤くふやけた足で、露天風呂を後にした。

「結局レオン気になってんじゃねえかっ!」

「次は延滞すんなよー!」

踊り狂え、日本!

あーあーあーあー、文章では声の大きさが伝わりませんが、今起きた地震は私が原因です。

F香川です。

みんな普通に働いてて、普通に恋愛してて偉い!狂い人じゃなきゃ続いてないと思います。

僕だってみんなに偉いって思われたいから色々な鬱積を我慢してるのですが、今回は脊髄反射でそれを殴り書いて行きたいと思います。辛め味濃いめ薄さ薄めハンペンとか。

Mr.鉢巻ガチ巻き男!

ラッキーアイテム4億、無理っつーの!

仮染の白!芸能人の歯!

本当の白!甲子園球児が足で払ったホームベース!

カビパン、出撃3秒前!

勝ちたいだけじゃん。大人気な。

晴れ時々ビー玉

うぜーヒトデ!お前、もう山行け笑

インドのカレー食ったことねえ・・・

カッチーン!え?あ、ええ、勃起です笑

 

Mrs.カニ蛇の必殺技、這いずりハサミ!

しらたき、豆腐、しいたけ!スロットイン!プログラムアドバンス、じいちゃんのすき焼き!!

越えられない壁を前に俺は・・・割り算からやり直そう。

痴漢!私オカマよ!

砂漠でカロリーゼロ?自力で痩せるわ!

単刀直入に言うけど、塩も多いし、色合いも煮込みすぎて茶色すぎるし、そもそも指が入ってたし、なんか臭いし、そういえばスーパーで買い物してた時から思ってたけど最初に、納豆から買いに行くのなんで?売り切れないから焦らないで野菜から回ろうよ。あとギャーーー!!!目はギャーーーーーー!!!

 

スッキリしたのでやめます。一人でこもって作業してると気が狂いそうになるんですよね。みんなのストレス発散方法が知りたいです。僕は何も我慢しない一分間を作るという方法を見つけました。

 

ひきこもループ

僕の部屋は春夏秋冬いつでも22度だった。ワインセラーの様に一定に保たれた室温は、外の世界へ羽ばたこうとする僕のやる気を削ぎ、やがて窒息させた。

梅雨明けの太陽に照らされたアスファルトを窓から眺めていると、3人の家族が歩いていた。この眩しさはあの3人の為の物なのだと思い、壊れかけのカーテンを強めに締め、定位置に戻る。こうして外の世界を見てしまったあとは、僕を母親の胎内のように優しく包み込む羽毛布団を愛して離せなくなった。

ぬるい室温で育ってきた僕は、働かなければ死ぬという当たり前にすら直視出来ずに死んでる様に生きていた。多分そう、これからもそうなんだ。

ある日の早朝、僕は一匹の野良猫と出会った。出会ったというには少しだけ遠く、分厚い壁を隔てていたが僕の認識では確かに会っていた。

窓の外から見た黒猫はニャーニャーとおばあちゃんの手に頭をこすっていた。昔テレビで見た知識だが、猫が人間の足や手を孫の手のように使っているという事を僕は知った。

なんとも落ち込む話ではあるが、眼前に映るおばあちゃんと猫は確かに愛し合っているように僕は感じた。

猫を撫でる柔らかさと温かさを想像とYou Tubeで補填してみたが、予想通りに可愛いし愛くるしい。

想像できてしまうから、僕は外に出ないんだ。どうせ面白くないと飲み会を断り、どうせ俺なんかと女の子の誘いを断り、どうせ続かないと何一つ始めない。

被災者でもないのにシェルターに逃げ込む自分が今日は不健康に思えて仕方なかった。

そんなことを考えていると、内から鍵をかけたはずの扉が勝手に開いた。僕はいつの間にか扉の向こうにいた。

手探りで人間の模倣をする怪物のように、歯を磨き、顔を洗い、髭をそった。想定を超えて伸びた頭髪は、ツヤもなく、パサパサとしていて普通にキモいなと思った。

洗面所を出て、久々に見たリビングには僕の分の椅子もある。僕はパンを焼いた。母親が買ってきていたのであろう6枚切りの食パンにブルーベリーのジャムを塗りたくった。何となくコーヒーも入れようと思い、ポットでお湯を沸かし、クルクルと注ぐ。

サクサクのパンとブルーベリーの甘さがたまらなく美味しかった。多分ブルーベリーの青さがそうさせている。僕の視界はずっと白黒だったから。

コーヒーは黒くて苦い、でもパンには合った。コーヒーの優しさに気づいた僕は、勢いのまま友人にラインを送ってみた。

「お疲れ。今日飲まない?」

となると、このままでは怪異だ。僕は髪を切らなければならない。僕は、父親から貰ったポーチに財布と2年間読みかけの文庫本いれた。

さて、準備完了だ。多分このときの僕は一般の人間と比べると不快で、不清潔でだったと思うけど僕なりに身なりは整えていた。

靴箱から自分の靴を取り出すと、数年越しに仕事を貰えた靴が生き返るようにホコリを散らした。パンパンとホコリを払うとシャープなロゴがカッコいい。

玄関の扉に手をかけるが扉が開かない。押しても引いてもビクともしない。怖いから?違う、鍵がかかっていただけだった。

僕は扉を開けた。

「「「うおおおおおおおおおお!!!!!」」」

太陽、セミ、マラソンじいちゃんが夏に燃えていた。

外のエネルギーはとてつもなく、ずっと家にいた僕は打ちのめされた。しかし、このエネルギーと僕は戦うんじゃない、夏と一つになるんだ。

僕も夏になる為に、少し激しめに靴をトントンした。

近所の遊歩道を目指して歩いていると、犬のウンチを片付ける老人と、ウンチなんかしてませんよ?みたいな顔でリードを引っ張る柴犬が格闘していた。

俺も負けてらんねえな。と思い負けじと僕も住居の庭から伸びている葉っぱを千切り対抗する。

しばらく歩いていても猫ちゃんの姿はなかった。自販機でコーラを買い、公園のベンチで飲みながら上を見上げた。久々の木漏れ日は、白熱電球の明かりしか浴びていなかった僕にとっては気持ちの良いものだったけど、「木陰ってこんなに暑かったっけ。」と呟くほどには暑かった。

公園の時計を見てみると7時半をさしていた。30分ぐらいしか外には出ていなかったし、猫を見つけることもできなければ、美容室に行くことも、文庫本を読むことすら出来なかったけど、下手くそな時間割りでも外に出られただけで僕の一日は輝いた。

空き缶をゴミ箱に捨てるとカランと良い音が鳴った事に、いや、この散歩の間に起きた事象全てに感慨深くなる。最早そこにこそ生きる意味を見出していた。

Tシャツがベトベトになる事を、不快と思わず、シャワーを浴びる理由と考えるだけで人生が楽しかった。

そんなことを考えながら、僕は帰宅した。

早速Tシャツとジーンズを洗濯槽にいれる。夏にジーンズは無かったなと今になって思いながら、ほぼ冷水のシャワーを浴びる。ガシャガシャと頭を洗っていると、耳の裏からでっかい皮脂みたいなのが取れて自身の不清潔さにゾッとした。 

体を泡で洗っていくと、風呂場の温度で体が温まっていくのを感じ、再び冷水シャワーで体を流した。

ほぼ震えながら体を拭く。下着の棚には僕の物もあり、僕の部屋着も入っていた。当たり前なんだけど、僕は家族と4人で暮らしていたんだ。

コップに氷を3粒落とし、麦茶を入れて飲む。TVをつけるとニュースがやっていて、今は新型ウイルスによる未曾有の事態の只中にいるという事を思い出した。そういえば、外出している人はみんなマスクをしていた。自分が引きこもっている間に時代が変わってしまったんだな。と思った。

タイムスリップ開けのテレビは新鮮で、食い入る様に見ていると、母親の寝室の扉が開く音がした。コツコツと階段を下ってくる。いつもなら刑務所の看守に怯えるように息を潜めるが、驚く事にリビングのドアが開いたとき僕は、「うぃー!おはよ!」と気持ちの良い挨拶をかましていた。

「はあぁ!」と腰を抜かす母親と自分の温度差に、自分がニートだった事を思い出す。そりゃそうだよな。

「良かったね。」母親が泣いていた。僕も「うん、猫が・・・」と言いそのまま泣いてしまった。

カキステッ!!3話

何処まで続くのだろうか。僕達は底の見えない穴ボコを永遠と下っている。

さっきまで興奮していて気付かなかったが下水道に向かっているようだ。

ハシゴを掴んでいる腕のせいで鼻がつまめないので、口呼吸に切り替えた。

「店長、疲れました。」

僕の弱音を無視して店長はひたすらに下を目指した。

もしかして今僕は地獄に落ちている最中で、店長は僕を地獄へ導く鬼なのかもと思った。そういえば鬼みたいな顔をしているし、あんなに怖いんだからそうとしか思えない。

位置的有利を使うなら今だ、死ね!

「鬼!」

僕は下っている店長の頭を踏んづけた。

「痛え!テメエ畜生、急になんだ!」

店長が鬼みたいな顔でこちらを見上げた。怖いから踏んで落とす事にした。

「ちっとも!つかない、じゃないか!いつに、なったら!下につくんだ!もう、僕は!ヘトヘトだ!」

「痛、痛てえ!バ、バジやめろ!八つ当たりすんな!もう少しだ!おい!てめえ!痛て!」

「この、鬼!なんだ!ちょっと、ハゲてるぞ!このやろう!クズ!給料、よこせ!倍よこせ!ハゲ!」

「あっ!」

僕の足がはしごを掴む店長の腕に当たった。やった!

「バジイイィィィ!!!・・・!!!・・・・・」

「お、落ちた。店長。こうなるとなんだか・・・」

そこの見えない暗闇に落ちた店長を探す為に少しだけ急いでハシゴを下った。

心にモヤをかける罪悪感が僕の身体を動かした。店長、どうかご無事で。

ハシゴを下ると予想通り下水道に繋がっていた。真下には下水が走っており、どうやら店長はここに着水したようだ。

すぐ横の通路に紺色のオーバーオールと白色のTシャツを脱いだパンツ一丁の男を見つけた。

「店長、無事だったんですね!」

店長は僕の好意を無視してこちらを睨みつけてくる。なんて闘気だ。僕はハシゴから通路に飛び移りながら店長からの攻撃に備えた。

「バジ、今回だけは許さねえぞ・・・」

「な、なぜ!」

店長が僕を下水に付き飛ばそうとする。

「お前も下水に浸かりやがれ!」

すかさず店長の腕を掴む。

「嫌だ!こんな臭い所入ってたまるか!店長は卑怯者だ。自分が落ちたからって人を道連れにするなんて人のして良いことじゃない!」

「お前が最初に・・・!今道連れにしようとしてるのはお前だろう!」

「黙れ悪魔!こうなったら貴様も道連れにしてやる!」

僕の体重を支えきれなくなった店長が体制を崩した。 

今だっ!店長と僕の体を入れ替えるように袖を引く。僕は起死回生の「柔」で店長を下水に突き落とした。

「さっきのは嘘だ!下水に突っ込めドブネズミ!」

バシャーン!と大きな水しぶきをあげて店長が下水に突っ込んだ。変な疫病を貰ってこないかだけが心配だったが、とりあえず悪を滅した。

「やったか!」

「バジィ・・・」

「不死身なのか!」

待て待て。と静止がかかった。声の位置を把握する為にキョロキョロと見渡すと僕たちが来たハシゴからだと分かった。

「追手かもしれん。」

店長は小声で呟いたあと、下水に流れている壊れた傘を手に持った。

僕は手持ち無沙汰だったので8歩ほど後ろに下がった。というかほぼ背を向けて逃げていた。

コツンコツン、とハシゴを下る音が近づいてくる。

足先から首ぐらいまで見えた頃に声の主が分かった。

「入れ墨のお客さん!」

「よっ!マスター、バジ」

店長とカウンター越しに話していた入れ墨のお客さんだった。店長はまだ肩を怒らせながら傘を構えている。

「あの、お店は上ですよ。」

僕は間違えて下に来てしまったお客さんを案内して差し上げた。

「その、間違えたわけじゃないんだが。」

入れ墨は悩むように、頭をポリポリと掻いた。

入れ墨は全身バネのようにしなやかな筋肉で、下水から通路に飛び移った。

「上はどうなってる。」

傘を構えながら店長が言った。カッコいいけど下水まみれで凄く臭いからもっとあっちに行ってほしかった。

「警察と揉めてるよ。俺はお前らがバックヤードに行くのが見えたから着いてきただけだ。捕まりたくなかったしな。」

「俺達に敵意は?」

「はぁ?そんなもんねえよ。」

入れ墨のはいったデッカイ首を左右に振った。なんだか嘘はついてなさそうだけど、店長はまだ警戒しているみたいだった。

「でも仲間たちは?店長のせいで捕まっちゃっても怒らないの?」

「オメェのせいだろ!」

「えっ!」

「アイツ等はいいんだ、ソリが合わない」

思い返せば入れ墨はカウンターで仲間たちに背を向けて寂しそうに一人で酒を傾けていた。

友達がいないのは僕と一緒だし、出来るなら信じてあげたい。

「しかし、団体はそうはいかんだろう?お前も地下じゃ実力のあるの選手だ。放っておく業界とは思えんぞ」

店長は傘を下水に捨てながら言う。入れ墨は視線を下水に落とした。

「実力だけだ。所詮人気職よ。」

入れ墨は分かりやすく肩を落とした。2メートルは超えているであろう巨体は小さくて頼りなく見えた。

「着いてくるなら好きにしな、そろそろ行くぞ!」

店長は大きくため息をつきながら下水からあがった。

「良かったね、入れ墨!」

「入れ墨ってお前な・・・」

「それならなんて呼べばいいの?」

「かけるだ、飛翔って書いてかける!」

「いや、その見た目で飛翔は無理でしょ!」

「・・・じゃあ好きにしてくれ。」

僕と入れ墨は、店長のあとに続き歩きだした。下水は電灯が反射して鈍く光っている。

薄暗い下水道を、所々アスファルトから飛び出ている釘に気をつけながら歩いていると、臭いに慣れたからか展望が見えないこれからについて頭が回った。

「店長、どこへ行くの?」

「裏新宿だ。人が多いから捕まらん。」

裏の警察ってそんなに熱心じゃないのかな?裏新宿は確か僕が地下送りになった時に、エレベーターで降りてきたあそこだ。

新宿の区役所が地下まで伸びていることに驚いた記憶がある。

「入れ墨は何でプロレス始めたの?」

「俺か?まあ、表でやってたから裏でもやってるだけだ。」

「強かったの?」

「まぁまぁだな。」

「おんぶしてよ!」

「まあいいけどよ。」

歩き疲れたから入れ墨に僕を運んでもらった。立ち仕事は足が疲れるからそろそろ限界だったんだよね。

「お前怖くねえのか?」

「入れ墨が?全然怖くないよ。」

「なんでだ。」

「友達いない人って怖くないじゃん。」

「いや、いるけど。」

「いないよ。同じニオイがしたもん。」

「いるのに・・・」

入れ墨の肩で楽をしていると、店長が壁から伸びるハシゴを見つけていた。

ここから上へ出るみたいだけど、下った後には上らなければいけない事を忘れていた。

あの距離のハシゴを登ることに僕はげんなりした。

「よし、登るぞテメエら。」

「明日にしませんか?」

「何言ってんだテメエバジテメエ!置いて行くぞ!」

「バジ、お前かなり軟弱だな。」

好き放題言われたことがムカついたので、僕に先頭を行かせてくれるよう頼んだけど断られてしまった。店長はまだ自分が下水に叩き落された事を根に持っているようで、ちっさい大人!身も心も!と思った。

僕は入れ墨の後に続いてハシゴを登った。行きよりも帰りが早く感じるように、上りの体感は少しだけ早く感じた。

店長がハシゴに足をかけながらマンホールの蓋を外し、息苦しかった下水から出る。やっとの思いで僕らは地獄から生還した。

「こんなに地下の空気ってうめえんだなぁ。今ならトイレにだって住めるぜ。」

入れ墨はベストのヨレを伸ばしながら、息を吸い込んだ。特徴的なコメントに微塵も知性を感じなかったけど、もしかして中卒なのかなぁ。

僕たちは下水から解放されたことを、路地裏で慎ましく喜んだ。

店長は、側にあった木箱の上に座りオーバーオールに手を突っ込んだ。

ポケットから下水でドロドロになった財布を取り出し、中身を確認するとスカンピンの財布に目を丸くしている。僕が徴収したのだから当然だろう。

「あれ?金がねえ。」

「いや、僕が持ってますよ。」

「なんで?」

「給料。」

痛い!僕の頭をげんこつで殴って財布から金を盗った!ガチの泥棒にあったのは初めてなので驚いて金を渡してしまった。なんて奴だ。

「とりあえずこれでビジホに行こう。臭え体も流してえしな。」

「いいじゃねえか!サウナ付きにしてくれや!」

「贅沢言うな!」

金は後で回収するとして、ホテルに行くのは賛成だ。あんまり店長が臭いからさっきから、鼻が落ちるのを我慢していたところだ。

それにしても裏新宿はやっぱりすごいな。ビルが天井をつけ抜けているのを見慣れることは無いだろう。

東京に始めてきた時に見た摩天楼よりも、僕はこっちの方が数倍は壮大に感じる。

上を見上げている僕の背中を入れ墨が軽く押した。

人だかりに紛れるには悪臭を放ちすぎている僕らは、歩道の隅を隠れるようにして歩いた。

幸い、ビジネスホテルが近くにあったので助かった。フロントでキーを貰い、3人でエレベーターへ駆け込んだ。受付に店長かチップを投げていなかったら、叩き出されていた事だろう。

「部屋は?」

「4階だ。大浴場があるらしいから、着替え持って行くぞ。」

大浴場!店長の家の狭い風呂しか入っていなかったから久々に手足を伸ばせる!なんてご褒美だろうか。

「店長大好き!」 

「現金なやつだな。」

エレベーターを降りて突き当りを右に曲る。店長が406号室と書かれた部屋の鍵を開けた。

入れ墨がクローゼットから部屋着を3着取り出す。

僕は洗面所のアメニティに目を光らせていた。どうしてビジネスホテルに来るとただの歯ブラシや化粧水に気を惹かれるのだろう。

僕らはスリッパに履き替え、エレベーターで1階の大浴場に向かった。

「これ着れるかな。」

「無茶して着ろ!」

デカすぎるのも大変だなと思った。かと言って店長のようなチビにもならなくて助かった。

「男」と書かれたのれんをくぐると、清潔な脱衣所に泣きそうになった。

「生きてて良かったです。」

「わかるぜバジ。」

僕らは服を脱ぎ捨て、勢いよく扉を開いた。蒸気による湿気が心地良い。体を流しにシャワーの前に座り、ふと入れ墨の方を見ると、体が傷まみれなのに気づいた。でも、そんなことよりも想像以上のチンコのデカさに失神するかと思った。

「入れ墨は外人なの?」

シャワーの音に消されないように少し大きな声で聞いてみた。 

「ああ、アメリカと日本のハーフだけど。」 

「すっげえチンコデカイね。」

「いいだろ。」

「超羨ましい。だって店長のと比べたら糸くずと国境くらい違うよ。」

「テメエもだろうが!」 

体を洗い、待ちわびた湯船に浸かると疲れが吹き飛んだ。でも温泉って疲れが吹き飛ぶというより、お湯に染みて消えていくような感じだよなと僕は思った。

「それにしても日本語上手いよね、ずっとこっちにいたの?」

「いや?こっちに来たのは5.6年前だな。」

「なんでこっちに来たの?」

「日本は治安が良いからな。」

「どこが!」

こんなに毎日喧嘩ばかりの街が何故!

「飛翔オメェ、アメリカにいた頃から地下にいたのか?」

「ああ、14の頃に地下行きが決まった。そっからは地獄だ。」

入れ墨も大変だ。それにしても熱いなぁ。入った時は気持ち良かったけど、長湯出来ないのを忘れていた。

「僕先に出てるね。」

「おう、洗濯出来るらしいから服だけ出しとけ。」

「分かった。」

フルチンを扇風機に当てながら体を乾かしていると、昔家族で行った温泉旅行を思い出した。

「はあ・・・」

持ってきた部屋着に着替えて、脱衣所にあった自販機でセブンアップを買って一気に飲み干した。

缶を捨てる音が寂しい。

洗濯機に全員分の臭い服を押し込み、スイッチを入れるとゴウンと洗濯槽が回るのを確認してから脱衣所をあとにした。

406と掘られている鍵で部屋の鍵を開ける。広くて僕には勿体ない部屋だ。

ベッドが思ったよりもフカフカで横になると少し眠くなってきた。今日は色々あって疲れたからなぁ。ちょっとだけ目を瞑ろう。あぁ、これはすぐに眠れる。

「おい、寝るなバカ!」 

「誰!」

予想外に高い女の子の声が聞こえて目が覚めた。エッチなサービスにも期待したけど、ちょっとだけ恐怖心が勝った。

「こっちだよ、ブス!」

「誰がだ!よく見れば可愛いって僕は思うけどな!」

「そっちじゃない!ソファに目をこらせ!」

一体なんなんだ、僕の悪口を言ってくるこの女は。ソファを見ても何も見えない。

「ソファ?」

僕はソファの周りをうろついたり、下を覗き込んだりした。

「どこだ!」

「ここだマヌケ!」

「痛い!」

こめかみが鈍痛に見舞われた。蹴られたのか?ソファの下を覗き込むのをやめて、顔を上げた。

「そのまま目を凝らせ。」

パンツだ。

「パンツが見えました。」 

「そうだ、今お前は私のスカートに顔面を突っ込んでいる。」

スカートから顔を出して、そのご存顔を拝もうとした時、ソファには上半身も下半身も無く、ただスカートが腰を掛けているという奇想天外な事が起きていた。

「ど、どういうトリックなんだっ!お前!こ、怖すぎ!」

「目を凝らせって!」

怖かったので僕はスカートの言うとおりにした。どんな呪いをかけられるか分からなかったし、めっちゃ怖いし。すると、ぼやーっとスカートから上と下が徐々に明確になってきて、声の主が判明した。

「人間だ。」

「当たり前だろ!」

「な、なんでさっきまで見えなかったの!だって、透過して・・・背もたれも壁も見えてたんだよ。魔法?ガチで何お前っ!」

「ほら、私地味だから。」

「そんなわけ無いだろ!」

確かに、顔立ちは地味系だけども。それだけでこんなに見えなくなるものか。僕は僕の常識を崩さないぞ!

「あっ!」

「えっ?」

女が指を指した方向を見るが何も無い。

「何もな・・・!消えた・・・」

「こっちで〜す。」

女は僕の肩に手を回していたこの香りは・・・風呂上がりの女の子の匂いだ。実体を確認した僕はちょっとだけ彼女を信じる事にした。

「ちょっと味見。」

女の子の味だ。多分男よりも美味しい気がする。

「キモッ・・・!クソッ、離れろこいつ!」

「うっ・・・!」

気配のない腹パンにとんでも無いダメージを受けると、僕は地面にうつ伏せになり痛みに体をよじった。そして寸分の時も置かず、女は僕の頭を踏みつけた。

「これで私の地味さが分かったかッ!楽しくジイちゃんの酒場で飲んでたのに、お前が警察なんかに連絡するもんだから思わずついてきちまったじゃあねえかッ!このッ、ダボハゼ野郎ッ!」

「わひゃりました〜」

誰か助けて!変なやつに変な動機で殺される!

「てんびょ〜、いれじゅみ〜!たしけて〜」

「情けねえ糞ガキだなッ!お前はよッ!」

「あんっ!」

クソッ!クソッ!この女僕をコケにしやがって。僕を踏んだ挙げ句、顔を蹴りぬきやがった!

地味なのは顔だけで、性格はめちゃくちゃパンクじゃないか!

「オラッ、財布出せテメエ。」

「お金ない・・・」

「いいから出せっ!」

「あっ、僕のお財布。どうしてそんなに酷いことが出来るの!」

「206円だと?!テメエ舐めてんのかッ!」

「全財産です!持ってってください。」

「いらねっよテメッ!」

「はあぁ!踏まないで〜!」

何故かピンチです!店長、入れ墨。早く来てください。あっ!

「僕の店長がお金持ってます、何とかそれで手を打ってください!お願いします!」

もうこうなりゃやけだ!僕は地面に頭をこすり、女の足の指の隙間まで舐め回し懇願した。

「おい、やめ、ろ。わかった、わかったから!」

「ありがとうございますっ!」

よかったー!僕は余命を数十分繋いだことに安堵し、顔を上げた。ッッッ!っへえー、よく見ると可愛い顔してんじゃん。もうちょっとだけ舐め舐めして、これから死闘を繰り広げるであろう敵の足の味だけでも分析する事にした。

「えれーっ」

舌を出して女の足に近づけると、女は足を急いで引っ込めた。何だか頬も赤い。

「ふーんっ、怖いんだ。可愛いとこあんじゃん。」

「踏み殺すぞテメエッ。」

「かーわいっ。えれー!」 

ナメナメナメナメナメナメナメナメナメナメッ!

「うっ、おまっ、待って、このっ!」

「形成ぎゃーくてん。の巻。えれっ。」

ガチャ。とドアノブを回す音がした。

「何してんだオメェ。」

「おっ帰りなさーい、てんちょ。えれーっ!」

「バジ、床は従業員が掃除するもんなんだぞ。」

ああ、店長と入れ墨はこの女が見えてないんだ。今僕は、二人がいない間こいつと戦ってたんです。

「お、お前はっ!」

「?二人ともソファに目を凝らして見てください。」

「ん?んーっ。」

入れ墨が目を凝らすと、この女の恥ずかしい姿が徐々に見えてきたようで、肝を抜かれた様な顔をしている。女はもはや顔を隠しており戦意喪失。はい、僕の勝ちー!

「女がいるっ!な、何だこいつ!」

「のどかっ!」

「店長知ってるんですか?」

店長はずっと見えてたみたいだけど、なんでだろう。それに名前も知ってるし。

「そいつは俺の娘の娘。孫だよ。」

「や、やっほー、ジイちゃん。こいつ何とかして〜」

「あぁ、今からブチ殺すからちょっと待ってろ。」

これは、甘んじて受けよう。・・・キャンっ!

まっ、友達いるし!7人くらいだけど!

衣食住に執着がないから、それを査定の基準にしている人を見ると嫌になってしまう。

もっと奥の奥にある人間性を見てから、人を好きになるか嫌いになるかを決めるべきじゃないのか?

一年前にネットでゲーム好きの女性と知り合った。

顔をお互い知らなかったから気楽だった。

自分ははっきり言って顔が良い。そんな自分を目当てにしてくる女性は今まで何人か見たことがある。

そんな人達とは価値観が合わなくて別れたし、自分から願い下げだと思った。

だからこそ完全にお互いのプライベートを知らないという事が幸せだったし、時間をかけて好きになっていった。

先日僕は初めてプライベートを明かした。というより話のネタに僕の住んでいる家が使えそうだと思ったからなんの気無しに明かしてみただけだ。

僕の住んでいる6畳の家はとても人に見せていい家じゃなかった。玄関の階段は一人通れるくらい細いし手すりもボロボロ。扉は風で開くしなにより細い。

6畳と言ってもとても縦長な6畳だ。バスのような間取りに僕は寝床を構えていた。

その家の外観を僕はその子に見せてみた。ほんの話のネタのつもりだった。

以後の返信はなかった。僕は実質振られたんだ。

結局の所、人の事を好きになるという事は衣食住という最低の生活水準を備えてからでないと話にならないということを知った。

僕はそこの辺に大変疎いし、友達も僕の家を好きだと言ってくれていた。僕もこの家が実は好きだ。

この事を思い知ってからは人間と付き合う事は無理だと思った。一気に視野が狭まって、女性人口が35億人から7人くらいに減った様な思いだった。

結局金が必要な世の中で僕は生きていかなければいけないことが嫌だったけど、少し前向きになるなら生活水準さえ整えれば何とかなるのかも。とも思えた。

初めて東京にきて打ちのめされて、人の価値観を知って、生きづらさは更に増したけど頑張ろうと思った。

ありがとうございます。僕はこの家と共に成長していければと思います。
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護れー!護るんだー!護るって何だー!

『突如上空に現れた謎の球体。

人々はそれを見て、約束された平和など何処にも無いことに気づかされた。ある者は肩を落とし、ある者は神に祈り、ある者はこれから起こり得る惨劇から目を逸らした。そしてある者は、平和は訪れるものでは無く、掴み取る物なのだと決意した。』

 

隊長「我々がこの地球を守る最後の砦だ。

貴様らはこの日の為に血の滲むような訓練を数多くこなしてきた。

それは貴様らが貴様ら自身の仲間、恋人、家族の血を流させない為に励んできたという事は私が言うまでもないだろう。

最後の一人になるまで戦うのだッ!そして、我々の国を・・・未来を救えるのは貴様たちだけだッ!!!

地球防衛軍の誇りを、人類の底力を奴らに思い知らせるのだーッッッ!!!」

“うおおおおおおおお!!!!!!!!!!!”

 

隊長「では、各自戦闘配備!奴らの目にモノを見せてやれ!」

 

“イエッサーッ!”

 

民間人の避難は住んだだろうか。うちは基地から近いから出来るだけ家族を巻き込まないように攻めてきてくれないかなと不謹慎ながら思った。

空では戦闘機が射撃を始めている。宇宙人も余裕があるみたいで、抗戦の姿勢はみせていなかった。

僕らの使命は日本の核とも言える、この基地を防衛する事だった。今に化け物が来てもいいように僕たちには厳戒態勢が敷かれていた。

 

田中「佐藤!おい、佐藤!」

隣の田中がこそこそ話しかけてきた。

佐藤「なんだよ。」

田中「防衛って何するんだよ。」 

佐藤「そりゃ、守るんだよ。」

田中「何から何を!」

佐藤「あの地球外生命体から、ここをだよ。」

僕は空に浮かぶ妙な球体と基地を交互に指した。

田中「攻めてこないのに防衛ってなんだよ。」

佐藤「分かんねえよ、でも防衛するんだよ。」

田中「今防衛できてるかな。」

佐藤「うーん、多分出来てる。」

田中「防衛って簡単だな。」

佐藤「まあな!」

田中「・・・疲れたんだけど座っていいかな。」

佐藤「知らないよ。」

田中「でもさ!一人目ってなんかあれじゃね?」

佐藤「そうだな、一人目は目につくな。」

田中「一緒に座ろうよ。」

佐藤「嫌だよ!」

田中「でも防衛はしてるしサボってはないよ!」

佐藤「そうだけどさ!」

田中「じゃあいっせーので!の」

佐藤「どっこいしょ!」

田中「あっ!」

田中は座らなかった。

佐藤「お前さー!」

田中「いっせーので!のタイミングで行こう!って言おうとしたんだって!」

佐藤「もういいや、お前そういう所あるよ!」

田中「ねえ!佐藤ー!こっち向いて!ねーえー!ねえ!ってー!おーいー!佐藤ー!それは違うじゃーん!」

田中が肩を揺する。

佐藤「ちょ、うざいって!もうわ、分かったから!おま、お前!ちょ、あの、やめて!」

田中「許した?」

佐藤「いや、やっぱ駄目。」

田中「ねーえー!ずるいってー!おーいー!佐藤ー!それはうざいってー!」

田中はまた肩を揺すった。

佐藤「わ、かった、か、ら!ゆる、すからもう!やめ、て!」

田中「イエーイ!」

佐藤「お前うざ!」

隊長「貴様ら静かにせんかッ!!!」

 

“イエッサーッ!”

 

田中「はあ、防衛って暇だな。」

佐藤「そうみたいだな。」

 

〜2年後〜

 

田中「ドラクエで就きたい職業なに?」

佐藤「魔法使いかな。」

田中「うわー、向いてそう。」

佐藤「お前は?」

田中「俺武闘家。」

佐藤「向いてそう。」

田中「前に立たない武闘家。」

佐藤「僧侶じゃん。」

隊長「俺盗賊。」

田中「めっちゃ似合うっすね。」

隊長「顔で言ってる?」

田中「顔と性格かな。」

隊長「ただの悪人じゃん。」

田中「万引き常習犯。」

佐藤「意地汚いからおかわりめっちゃしそう。」

隊長「うざ!」

田中「貸したもの返してくれなさそう。」

佐藤「友達いなさそう。」

隊長「言いすぎじゃね?」

佐藤「でも地元に恩返ししてそう。」

隊長「お前!分かってんじゃん!」 

佐藤「チョロ!」

田中「ただの元ヤンになっちゃった。」

隊長「しりとりする?」

佐藤「こんな元ヤンいねえよ!」

田中「しりとりかぁ・・・リス。」

隊長「リンゴから入らない奴始めてみた。」

佐藤「しりとり一回しかした事無いんすか。スイカ。」

隊長「なんか俺の視野が狭いみたいじゃん。か、か、か〜蚊!」

田中「早くね?」

隊長「すまん、思いつかんかった。」

佐藤「なんかさ。」

田中「なに?」

佐藤「防衛ってやることねえな。」

田中・隊長「まあね〜」

 

 

 

 

 

地球が裏返る。ただそこに〇〇だけが存在した。

ミーミー!猫のミイちゃん!

今日はどこにお散歩かな?そう、今日はミイちゃんお気に入りの公園で日向ぼっこ!ミイちゃんなんだか嬉しそう!

あれれ?

お家の窓がしまっているね?

ミイちゃんは長ーく伸びた自慢の爪でカリッ!カリッ!と上手に開けました。ミイちゃんすごい!

ぴゅー!っとお外にでると、あちち!なんだかお外は熱いねー。きっとせっかちな夏さんが「春なんて終わりだー!」って早くに来ちゃったんだね。

テクテクテク、あれれ?何だかお外が暗いね。きっとせっかちな夜さんが「良い子は寝る時間だぞー!」って早くに来ちゃったんだね。

そういえばお隣さんはー?ご引っ越しですかー?ミーミー!あれれ?お家がないぞー?

ちょっと待って?ここはどこー?ミイちゃんは暗くてこわーい所に迷っちゃったみたい。

ゴツゴツなお岩さんがこっちを見ているね!ミイちゃんは急いで物かげに隠れました。

「ドカーン!俺は怒ってるぞー!」とお山さんが大噴火!ミイちゃんこわーい! 

どこなのー?どこなのー?ミーミー!だーれも返事はしてくれません。

僕は一人なのー?ミーミー!

ミーミー!

ミーミー・・・

ミィ・・・ッッッ!!!

 

泣いてるだけじゃ何も変わらない。ミイちゃん、いや、ミイは決意した。

この地獄の様に変わり果ててしまった街を、絶望を生き抜く為にミイは変わった。

ミイはもう誰にも頼らない。大好きな日向ぼっこをする為に、大好きなみんなに会うために一人で世界を救う方法を考えた。

伸びきった爪を岩に当て、決意を彫り残した。

 

にゃーにゃにゃいにゃうにゃんにゃわーん

 

(地球はまだ負けていない!20☓☓・・・一匹の猫)

 

絶望の最中にでっかいオッパイを見た

F香川です。

 

さっきバイトを辞めてニートになりました。

バイト先にコーヒーを差し入れしたあと、バイトをやめる旨を伝えるとオーナーは優しく「頑張ってね。」とだけ言ってくれた。

丁度良い見送りに少し胸を打たれ、貰った給料袋を握り締めながら店を出た。

 

あまり多くない額面の給料明細を見ながらトボトボと歩いていると、ガールズバーの前でティッシュ配りをしている女性がいたので会釈だけして貰わなかった。

働いていない人間にもティッシュを配る彼女が煩わしく感じたし(そいつのバックボーン考えて渡せ!なんて思わないけど)、まだ明るい駅前の商店街は僕にとってもはや居心地の悪い場所になっていた。

 

普通に家に帰る気分にもなれなかったので、何処かで時間を過ごす事にした。

差し入れしたコーヒーと同じ銘柄のコーヒーをコンビニで買い、川沿いのベンチに座りボーッとしていると、ランニングをする男女が遠くから走って来るのが見えた。

 

だらしなく出した足を仕舞うのも面倒くさかったので、社会的弱者の僕は強者を装って足をさらに放り投げた。

コーヒーをちびちびと飲みながらカップルランナーを見ていると、胸がつっかえた。

異変に気づく僕は走るランナーを見て、えっ!突然のインパクト!!!

乳デカッッッッ!!!!!!!!!

さっきまで失意の中にいた僕は、いや嘘だな。黄昏れゆうちゃんモード(略してモード黄昏れゆうちゃんモード!)に入っていた僕は揺れる乳を見る事に夢中になり、えっ!こんな事って!?乳!どういう意味?!とパニック状態!

やだっ!すげー!うおー!えー!なんでー!という顔をコーヒーを一気飲みする事で隠し、乳ランナーをガン見!やっば、なんなんだ!これはー!

長っ!乳デカ!ってなってる時間長っ!遅っ!走るの遅っ!時速3キロっ!それはもう走ってない!乳をゆらしてるだけだっ!

と思いながら怪人乳ランニンガーが走り過ぎるのを見ていました。

これを書いている今も「何で俺は…情けない人間なんだ…」とかは一切思う事なく「今日のラッキー見つけたり!」という感情しかありません。

あーあ!超つえー神になりてーっ!!

チェス盤は既にひっくり返されていた

F香川です。

チェスはゲームだ。

序盤に負けていたら終盤での巻き返しは難しい。

しかし、人生はゲームではありません。

序盤にいくら先を行っていても突然の巻き返しがある。

名門サッカー部キャプテンも交通事故事故にあえば足が折れる。

資産家も火事に見舞われれば家が燃える。

売れている芸人も舌が切れればお終い。

しかし、そんな突発な事がなくても人生は自分次第でどうとでもなってしまうくらいには脆くて水っぽい。

優勢な盤面を崩してしまうときもあるかもしれない。時には自らの手でひっくり返してしまい、劣勢に追い込まれるかもしれない。

退屈な出来レースを面白い勝負に変えられる可能性もある。

僕は友達がお家で女の子と電話をし始めたので外でお酒を飲みながらこれを書いています。

劣勢です。

え、王手?誰か助けて。

カキステッ!!2話

バイト、辞めれば良かった。

僕は昨日バイトを休む決意をしたばっかなのに、皿を洗っている。

僕の働いている酒場は凄く賑わっている。路地裏でジカジカと今にも切れそうな看板のネオンを見て、忙しくなさそうで良いなと思ったのに。

店内はむせ返るような男の熱気と、葉っぱが焦げた匂いで充満している。

喧嘩が起きたら店が壊れて、警察を呼んでも店が壊れる。僕の仕事は掃除と皿洗いだ。

それもこれも店長のせいだ。

こんなに忙しいのにカウンターで入れ墨の巨漢とお喋りしてやがる。

昨晩バイトを休む事を店長にいうとすごい剣幕で叱られた。

僕より少しだけチビのくせに怖すぎて吐くかと思った。殴り合いになればと思い、ちょっとだけスネを蹴ってみたらもうちょっと吐きそうになるくらいヒートアップしたので思わず土下座した。

全く惨めすぎる人生だった。

店内のボリュームが上がる。ヒートアップした男達に観衆が騒ぐ。

皿洗いを終えた僕は、フキン、チリトリ箒を準備した。

あああ、慣れって嫌だ。喧嘩が起こるって分かったからなんだ。

なんで僕が後始末しなきゃならない?お前らが汚したんだからお前らが片付けるべきだろう。

でもなぁ、僕の身長はせいぜい170あるかないかだけど今掴み合っている男の体格は二人とも、全盛期のボブ・サップのような体型をしている。

うーん。と悩んだ後、やっぱり箒を手に持った。

おい、と雑に店長に声を掛けられた。

「止めて来い」だって。

「一応行くけど僕じゃ無理ですよ。」

「さっさと行け!タコガキッ!」

店長はチビのくせに口が悪い。

「え!タコガキ!?今まで一つも止められた喧嘩なんて無かったのに、僕を行かせるなんて諦めてる様なものでしょう?」

言ってやったぞ。お前を言い負かす妄想なんて千回以上してるんだこっちは。僕に口喧嘩で勝てると思うなよ!

ふぅ、と一つため息をついた店長は僕に言い放った。

「家賃は、食費は、光熱費は!」

そう、僕は店長が使っていない部屋を借りて居候をしていた。地下へ来た時に路頭に迷っていた僕を匿ってくれた時は、天使かと思った。チビでハゲの天使もいるのかと思ったけど、今は悪魔にしか見えない。

ああ、神様。この悪魔をぶち殺す勇気を私にください。出来れば圧倒的に打ちのめすパワーと確実な殺しの技術もください。

地下からの悲痛な願いは天まで届くわけもなく、僕はケンカを止めに行くハメとなった。

カウンターから出て二人の大男に近寄る。デカ!

「あ、喧嘩は外でー」

二人の視線がこちらに向いた。

「あっ、やっぱり店内でやった方が良いと僕は思う!店長はそうじゃないみたいだけど!」

怖!店長、僕には無理だ!すまん!

身体をカウンターに滑り込ませる。

「バジ!テメエなにしに行ったんだ!」

「コップはさげてきました、洗います!」

無能じゃない僕は空いたグラスを下げてきていた。スポンジに洗剤を滲ませ、隅々まで磨く。

グラスを磨いてる間は僕の身は安全なんだ。これは僕の仕事だ、誰も僕がグラスを磨くのを邪魔するな。

磨き終えたグラスを磨いて、そのグラスをまた磨く。片付ける・・・フェイントを一つ入れてもう一磨き。

「お前はいったい何の役に立つんだバジィ!」

「僕にもわかりません!」

店長がキレた。店内は今にも火蓋を切ろうとする大男二人にヒートアップしている。

「お前は無能で嘘つきでしょうもないガキだ!そんなお前を雇ってやってんのは誰だと思ってんだ!」

「でも安月給だ!」

「お前が週2しか入らねえからだろうが!」

「用事があるんだ!」 

「フリーターだろテメエは!」

僕はグラスを磨いている。頼む、一人にしてくれ!

目の前でジャージャーと流れる水に涙が一粒零れた。

「行けぇええ!!!殺せぇええ!!!」

始まってしまう。僕は、駄目だ。僕は変われないから飼われないと生きていけないんだ!

「そんなの嫌、あなたが殺すのよ!」

「分かった!」

体が動いた。顔を殴った。僕の拳が意外にも硬い店長の顔面をぶん殴ったんだ!

喧嘩を始めたのは僕だ!これは凄いことだ!

向こうでも同じく喧嘩が始まった。こっちとは違って派手に血が舞っていて、なんというか高揚した。

「え、お前らも?」

カウンターの入れ墨が物音に慌てて振り向くと、倒れた店長と、僕を交互に見て言った。

「バジィ、テメエ。やりやがったな。」

店長が起き上がろうとしていた!

「起きたら撃つ!」

しまった、銃なんて持っていないのにテンパった。入れ墨が笑うが構ってる暇は無かった。僕はそのまま店長に馬乗りになって殴る。

歓声のほとんどが僕に送られたものではないが、それでも僕のアドレナリンをかきだし、血液を沸騰させた。

「良くも、俺をこき使って、くれたな!俺は、お前の、マリオネット、じゃない!」

僕は殴りながら吐くように言う。人を殴るって事がこんなに疲れるということを、僕は知らなかった。

「操り人形でよくね?」

入れ墨は喧嘩に慣れたもんで冷静を極めていた。

「うるせえ!」

急に恥ずかしくなった僕はぐったりとした店長の顔面を蹴っ飛ばした後、バックルームに戻った。

プチプチと制服のシャツのボタンを外しながら電話で警察に電話した。

「喧嘩です、すぐに来てください。」

受話器を置いたあと、なんとなく店長のスマートフォンを叩き割った。

自前のパーカーに着替えながら机の上に置いてあったシフト表を裏に向け「やめます。給料は財布からいただきました。」と書き置いたあと、財布から現金を全て抜き取り、パーカーのポッケに突っ込んだ。

バックヤードから血しぶきが舞い散るフロアに戻る。こんな恐ろしい職場ともおさらばだ。

カウンターのスイングドアを開くと、「ハジ、やめんのかい?」と入れ墨が聞いてきた。

「ええ、店長怖いんで。」

僕はそう客に言い残し去ろうとしたその時。

「バジィ、お前人殴った事ねえだろ。」

「店長!僕は・・・!」人を殴った事なんて人生で一度もありません!本当にすみませんでした!

言い終える前に僕の身体は空中に投げ出された。チビなくせに店長は強かったんだ。

喧嘩になれば勝てると思ってたのに、喧嘩になっても店長には勝てなかった。

僕の身体は盛り上がった客の酒が並ぶテーブルに突っ込んであらゆる酒を頭から被った。

僕は朦朧とする意識の中バックヤードに連れ込まれた。どうやら説教を食らうらしい。バレたら殺される。

「俺のスマホが!バジテメエ、それにやめますってどう言う事だ!」

「だって・・・」

店長が、それに店長殴って続けられないですよ。

僕は泣くのを我慢するのに精一杯で、言葉を続けられなかった。

お店一つ辞められない、店長一人ぶっ殺せない自分が嫌だった。

「バジよぉ、何が嫌なんだ?ここで働いてりゃ金には困らねえし、宿も提供してる。格安でだ。出てったってテメエにゃ何一つできねえだろう?」

店長の最もな言い分に言葉を失った。

「ケンカだって日常茶飯事だろ?いつまでもビビってたらこの街じゃ暮らしていけねえぜ?」

「店長、すみませんでした・・・」

「いや、俺もだ。さっきは言い過ぎたな。」

「僕も気持ちよくなっちゃって殴り過ぎました。」

「ああ、殴り足りたか?」

「いえ、もっとコテンパンにしとけば良かったと思いました。」

「そうか・・・」

「はい・・・」

店長と少しだけ気まずくなっていると、ドタドタと店内が騒がしい。

ああ、警察か。と僕は思ったが店長は様子がつかめていないようだ。

僕が説明をすると、店長が「何ぃ!」と目を見開きカウンターに戻った。

僕も急ぎカウンターに戻り店長に訪ねた。

「今日は何かあるんですか?」

「ああ、オメェには説明してなかったな。」

店長の顔が引きつっている。どうしたのだろうか。

「今日の客は、地下プロレスの試合終わりに打ち上げに来た団体なんだ。」

「それが何か?」

「うちの店には違法も合法もねえ。腹に一物抱えた連中がここで騒ぐって訳だ。こいつらが捕まってみろ。芋づる式で業界の闇がわんさか出てくるだろうな。」

「つまり?」

「つまり、警察に通報したお前と店主の俺は団体からの報復を食らっちまうって訳だ。」

「嘘だろ!」

「バジィ、やってくれたな。」

「だっていつも通りに僕、僕は!」

「俺に一言言ってから・・・まあいい。行くぞ!」

店長は頭を掻きむしりながらバックヤードに戻る。

「どこへ!」

「どっかだ!」

バックヤードのマンホールを開くとそこの見えないハシゴが伸びていた。

僕は店長に続いて中に入り、マンホールをガラガラと閉めた。

 

草!ってオイwwwwwwww

F香川です。

帰省して久々に小1の甥っ子に会った。

身長の伸びは去ることながら、男の子らしく角張っててきた体付きを見た僕は、つい最近までベイビーだったのに…と寂しく感じた。

公園でたくさん走った後に(子ども達にとっては少しかもしれない)コンビニで買ったオレンジのアイスの実は当然すぎるぐらい美味しくて東京に帰るのが少し嫌になった。

家に帰ってSwitchからYouTubeを開いた甥っ子。

スマホ歴6年くらいの僕よりも早くYouTubeを開く甥っ子にちょっと心配になる。それにしたって今の子どもって進んでるなぁ。

しばらくすると面白い動画を見つけたのか甥っ子がケラケラと笑っている。微かに聞こえてくるゆっくりボイスにますます心配が加速する。

甥っ子は自分にも聞かせようとしているのかYouTubeの音を上げた。Switchのスピーカーはしっかりとしていて騒音はゆっくり僕の鼓膜を刺激する。

うるせえな。と思ったので無視していると甥っ子が我慢できなくなったのか口を開いた。

「これ草。」続け様に「この青の恐竜映えなんだけど。」

え?キモ?甥っ子がキモキモ成長してた。

思えばさっきもキュリー夫人だかが実は学者なんだよ。とか言われたな。

そんな事も知ってるなんてすごいね!なんて思ってたけどインターネット特有の知識の偏りじゃねえか。キュリー夫人が何したか知らんくせに。僕も知らないけど。

さっきまで可愛かった甥っ子が突然可愛く見えなくなってきた。急に偏屈なガキに見えて仕方ない。

それから遅れて子どもにインターネットに触れさせる怖さがジワジワとこみ上げてくる。

時代を憂いたことなんて今まで無かったけど初めて学校でインターネット教えてあげてくれ…と思った。

麻薬の危険性とかよりももっと身近で恐ろしいぞ。僕のブログもそうだし、小説もネカマツイッターも全部ネットタトゥーっていう一生消えない生傷だ。

僕を教本にでもホルマリン漬けにでもしてくれて構わないからさ、可愛かった甥っ子を返してくれ・・・

このまま成長して逸材が出来上がるのを防ぎたいが、こんな時代じゃ外にも出れないし仕方ないよな。と甥っ子を少しかわいそうに感じた。

そういえば最近僕がよく使っている「タコガキ」は全く流行らんなぁ。

流行れ!タコガキ!

 

 

 

 

 

 

 

カキステッ!!

思春期ってあるだろ?ちょうど僕のちんちんに毛が生えてきた時だ。父ちゃんや今の僕みたいに、陰毛なんてウジウジしたみっともない名前が、嘘みたいにたくましい陰毛じゃない。

正真正銘本物の陰毛だ。

昔、僕たち家族は、キャンプ場に併設された銭湯に入った。

父ちゃん、兄ちゃん。なんかごめん。僕は子供なのか大人なのか分からないちんちんがすごく嫌で、タオルを腰に巻いた。

いやぁ、ご立派!父ちゃんと兄ちゃんには適いませんなぁ!なんて顔はあの時の僕には出来なかった。

きっと僕の身体の変化を見て二人は笑ってるんだ。ほら、あそこのおじさんだって、僕の産まれたての陰毛を見て笑ってるに違いない。

温泉特有の熱めな温泉に肩まで浸かりながら思っていた。

僕は卑屈だったんだ。

そんな時だ。旅の恥は掻き捨てってことわざがあるでしょ?このことわざを思いついたんだ。

昔のバク売れことわざ師が出先の風俗で考えたと世の中は思ってるかもしれないけど、あれは僕の経験と思春期が産んだ僕の作品なんだ。

きっとロストテクノロジーで作られた、AI五右衛門とかいう木製の機械に、僕のことわざを権利ごと盗作されたに違いない。

ことわざに勇気をもらった僕は腰に巻いたタオルを外した。

フルチンで頭を洗ってフルチンで身体を流しフルチンで脱衣所の扇風機に当たった。

気持ちよかった。ちんちんが外界に触れて。粗末なちんちんをみんなに見られて。

心のATフィールドが無くなったような気持ちになれた。人の目が怖くなくなったんだ。

思春期を超えた僕は強くなった。

骨格はどんどんとガッチリして行き、上腕のあたりにも筋が入った。ちんちんの毛もどんどんボーボーになって行った。

最強、無敵、勝ち、ボス、4倍攻撃、ぶっ飛ばす、僕は強い言葉を覚えていった。

僕は正真正銘の男になった。

舞台は裏TOKYOまで一気に進む。

僕はこの世界で最弱だ。ザコ、負け、土下座、足舐めます、4倍でぶっ飛ばしてください。

こんな事ばっかり思っている。

でも旅の恥は掻き捨てなんだ。旅って人生も旅みたいなものだろう?

恥は掻いて捨てよう、人の目なんか気にしてちゃ駄目なんだ、優しさなんて嘘だ。

鑑真は飛び膝蹴りでムカついたやつの顎を破壊して回るし、チェ・ゲバラは完全な利己心で革命を起こしたし、千利休は茶室でコソコソと薬と酒に溺れてる卑怯者だ。

訳も分かんねえ奴らに優しくするのはもうやめだ。僕は壊すぞ。

明日はバイトだけど休んでやる。僕は僕の革命をこの街で起こしてやる!見てろバカ!

 

 

 

伝えたい事は分かりやすく伝えよう。 

夜の会議室は蟹食べてる時くらいの静けさだった。もうすぐ2時を過ぎようとしている時計は殺し屋くらい几帳面にそして確実に針が進む。

松崎しげる程に暗い闇の中を壁伝いに進んでいるとコピー機の電源ランプがはじめしゃちょーのサムネイルのような緑色に点灯している。

僕が会議室に来たのは待ち合わせの為だった。

昼間仕事を図書委員くらい卒なくこなしていると一見のメールがパソコンに届いた。

社内メールかな。と思った僕は隣のクラスの煩いけどイケてない奴くらい意識せずにメールを開いた。

確認するとアドレスは会社のものではなかった。恐らく個人のスマホやPCから送られてきたようだ。文面は「夜中の2時15分第2会議室にて電気を付けず貝のように待て。」とだけ。

心臓に僅かの緊張が走った。例えるならそのー、子どもの時にシートベルトを締めていない時に警察のサイレンが聞こえるくらいの緊張だ。

自分で言うのもなんだが仕事のミスも少ないし人間関係も軽音サークルの組み立てのバンドくらいにはいい。

つまり自分に落ち度は無いが何となくのモヤモヤを解消する為に僕は夜中の会議室に赴く事にした。

それにしてもこんな遅い時間に呼びつけるなんて一体誰なのだろうか、よっぽど聞かれたくない話なのだろう。総務部の北野さんだったらなぁ。とか希望的観測を持たなければこの暗闇は耐えがたかった。

約束の15分だ。入り口からノブナガの間合いの外くらい離れた席に座る僕はドアが開くのを待った。

しかし待っても待っても来る気配はなかった。相手は調子こいた寿司屋のような奴なのだろうか。イタズラにしてはあまりにも幼稚で悪質だ。まるで〜え〜、罰ゲームの告白とは少し違って〜まあ、悪質だ。

待つのが馬鹿らしくなった僕は席を立ち仮眠室へと向かうことにした。明日も朝から仕事なのだ。

そういえばメールには電気を付けずに待つようにと書かれていた。もしかしたら僕の誕生日をすっかり間違えた会社の同僚がこの部屋にサプライズを用意しているのかもしれない。とポジティブな想像をした僕は部屋の明かりをつけて確認する事にした。

電気のスイッチを徘徊する老人のように探す。確かこの辺りに…と手探りで入り口付近を探していると。ツルリと何かに滑り転倒した。

掃除されつくしたオフィスのようなオフィスで仕事をしてきた僕は何で足を滑らせたか分からずにかなり動揺した。

悪い予兆を察した僕の臓器がきゅっと締まる。嫌な寒気に脂汗が滝のように吹き出たあと、全身の血の気は公園の石をひっくり返した時の虫の大群のようにサーッと引いた。

ズルズルと背中を壁に預けながらなんとか立ち上がる。背中越しに手で壁をまさぐっていると電気のスイッチを見つけた。

見たくないものを見る事になるかも知れなかったが僕は恐怖に負け電気のスイッチを新進気鋭のベンチャー企業のように勢いよく押した!

夜の闇になれた僕はLEDライトに目をくらませた。徐々に慣れた目を少しずつ開き視線を恐る恐る落とす。茶色・・・?

「これお願いします。部長より」

うんちだ。僕が踏んだのは部長のうんちだった。

えっ!どういう意味??