桜が舞い散るスピードは秒速5cm・・・と、どこかの映画の冒頭で聞いた事があるが、実際はそれよりも遥かに早いらしい。
さっき帰り道を歩いてたら、後ろから二人の外国人のバカデカ英会話が遠めから聞こえてきた。
英会話と言いつつ、ノー勉の僕には何語を喋っているかも分からない。
相手の姿を想像しようにも、何故か脳内に出てくる外国人に対して、怖い人を連想してしまう。『8Mile』を見たせいだろう。
後ろポケットに財布が入っている事を手で触って確認した。
いつ外国人にスられるか分からないのに、ポケットから頭を出し続けている、お転婆な財布の無邪気さに苛立ちと愛おしさを覚える。
ああ、くそ。こういう時に限ってカバンが無い。いつも邪魔臭く背中にあり続ける癖に、有事の際には何故かいつも無いのだ。
これではあっという間に僕の財布は後ろポケットから抜き取られ、二人の高い頭上でキャッチボールされてしまう。
返せよ！と無様に飛び跳ねた挙げ句、無防備な土手腹に一発貰ってしまう。
腹に冷めた血が集まってくるのを感じる。先程よりも外国人二人組は僕に近づいて来ているようだ。
こうなれば撒くしかあるまい。後ろから迫る外国人二人組を走力で撒く。
とはいえ、急に走り出すのは相手に「貴方を怖がっています。」と直接伝えているようで挑発と取られかねない。
早歩きだ。向こうをわずかにスピードで上回る。
足の回転を倍速にした。
しかし、どういう訳か外国人と僕らの距離は詰まる。バカデカ英会話は既に僕の両耳を挟んで行われている様に感じた。
わー！追いつかれるー！そう思った僕を他所に、外国人二人組は談笑をしながらなが〜い歩幅で歩き去って行った。
そうか、僕は足が短いんだ。
結局いつもの杞憂だった。外国人はギラギラのラッパーとは真逆。キャプテン・アメリカの様に爽やかで歯の白い二人組だ。ずっと失礼な事を思っていて申し訳が無い。
トボトボと歩いていると、お婆ちゃんにも抜かれた。
俺の足・・・マンチカン？？
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