『突如上空に現れた謎の球体。
人々はそれを見て、約束された平和など何処にも無いことに気づかされた。ある者は肩を落とし、ある者は神に祈り、ある者はこれから起こり得る惨劇から目を逸らした。そしてある者は、平和は訪れるものでは無く、掴み取る物なのだと決意した。』
隊長「我々がこの地球を守る最後の砦だ。
貴様らはこの日の為に血の滲むような訓練を数多くこなしてきた。
それは貴様らが貴様ら自身の仲間、恋人、家族の血を流させない為に励んできたという事は私が言うまでもないだろう。
最後の一人になるまで戦うのだッ!そして、我々の国を・・・未来を救えるのは貴様たちだけだッ!!!
地球防衛軍の誇りを、人類の底力を奴らに思い知らせるのだーッッッ!!!」
“うおおおおおおおお!!!!!!!!!!!”
隊長「では、各自戦闘配備!奴らの目にモノを見せてやれ!」
“イエッサーッ!”
民間人の避難は住んだだろうか。うちは基地から近いから出来るだけ家族を巻き込まないように攻めてきてくれないかなと不謹慎ながら思った。
空では戦闘機が射撃を始めている。宇宙人も余裕があるみたいで、抗戦の姿勢はみせていなかった。
僕らの使命は日本の核とも言える、この基地を防衛する事だった。今に化け物が来てもいいように僕たちには厳戒態勢が敷かれていた。
田中「佐藤!おい、佐藤!」
隣の田中がこそこそ話しかけてきた。
佐藤「なんだよ。」
田中「防衛って何するんだよ。」
佐藤「そりゃ、守るんだよ。」
田中「何から何を!」
佐藤「あの地球外生命体から、ここをだよ。」
僕は空に浮かぶ妙な球体と基地を交互に指した。
田中「攻めてこないのに防衛ってなんだよ。」
佐藤「分かんねえよ、でも防衛するんだよ。」
田中「今防衛できてるかな。」
佐藤「うーん、多分出来てる。」
田中「防衛って簡単だな。」
佐藤「まあな!」
田中「・・・疲れたんだけど座っていいかな。」
佐藤「知らないよ。」
田中「でもさ!一人目ってなんかあれじゃね?」
佐藤「そうだな、一人目は目につくな。」
田中「一緒に座ろうよ。」
佐藤「嫌だよ!」
田中「でも防衛はしてるしサボってはないよ!」
佐藤「そうだけどさ!」
田中「じゃあいっせーので!の」
佐藤「どっこいしょ!」
田中「あっ!」
田中は座らなかった。
佐藤「お前さー!」
田中「いっせーので!のタイミングで行こう!って言おうとしたんだって!」
佐藤「もういいや、お前そういう所あるよ!」
田中「ねえ!佐藤ー!こっち向いて!ねーえー!ねえ!ってー!おーいー!佐藤ー!それは違うじゃーん!」
田中が肩を揺する。
佐藤「ちょ、うざいって!もうわ、分かったから!おま、お前!ちょ、あの、やめて!」
田中「許した?」
佐藤「いや、やっぱ駄目。」
田中「ねーえー!ずるいってー!おーいー!佐藤ー!それはうざいってー!」
田中はまた肩を揺すった。
佐藤「わ、かった、か、ら!ゆる、すからもう!やめ、て!」
田中「イエーイ!」
佐藤「お前うざ!」
隊長「貴様ら静かにせんかッ!!!」
“イエッサーッ!”
田中「はあ、防衛って暇だな。」
佐藤「そうみたいだな。」
〜2年後〜
田中「ドラクエで就きたい職業なに?」
佐藤「魔法使いかな。」
田中「うわー、向いてそう。」
佐藤「お前は?」
田中「俺武闘家。」
佐藤「向いてそう。」
田中「前に立たない武闘家。」
佐藤「僧侶じゃん。」
隊長「俺盗賊。」
田中「めっちゃ似合うっすね。」
隊長「顔で言ってる?」
田中「顔と性格かな。」
隊長「ただの悪人じゃん。」
田中「万引き常習犯。」
佐藤「意地汚いからおかわりめっちゃしそう。」
隊長「うざ!」
田中「貸したもの返してくれなさそう。」
佐藤「友達いなさそう。」
隊長「言いすぎじゃね?」
佐藤「でも地元に恩返ししてそう。」
隊長「お前!分かってんじゃん!」
佐藤「チョロ!」
田中「ただの元ヤンになっちゃった。」
隊長「しりとりする?」
佐藤「こんな元ヤンいねえよ!」
田中「しりとりかぁ・・・リス。」
隊長「リンゴから入らない奴始めてみた。」
佐藤「しりとり一回しかした事無いんすか。スイカ。」
隊長「なんか俺の視野が狭いみたいじゃん。か、か、か〜蚊!」
田中「早くね?」
隊長「すまん、思いつかんかった。」
佐藤「なんかさ。」
田中「なに?」
佐藤「防衛ってやることねえな。」
田中・隊長「まあね〜」