ヒキズる日記

ずっと引きずってます。

栞の挿し手と挿さり手

電車に乗り込むと扉の真横の座席に文庫本が一冊置き忘れてあった。乗客は厄介そうにその本を避けて座っていたが本の隣しか空いてる座席がなかったので僕はそこに座った。

居心地が悪かったし、何よりどんな内容か気になったので本を手にとって見る事にした。瑠璃色の海というタイトルとマッチした青い表紙の本は少し古びていて色褪せたページが雰囲気を出していた。
パラパラと本をめくると所々折り目のあるページがあったので持ち主からすると大切な本だったのかもしれない。
駅に忘れ物が保存される日数は分からないけど、持ち主が取りに来たらいいなと思い改札の駅員さんに本を手渡した。
もしも持ち主が現れたらと考えた僕は、拾った人がいる事にも気づいてほしかったので本の一ページ目に自分の本に挿してあった栞を瑠璃色の海に挿し変えておいた。

僕だったらそんな仕掛けがあったら嬉しいし、持ち主が現れず処分されたとしても一切構わないくらいに思い入れのない栞だったからそうする事にした。

栞の行方を想像すると楽しいし、新しく買う栞も少し特別な物になる気がするからやってみて良かった。

ブックオフに寄り道し、瑠璃色の海を買おうとしたのだが、作家の棚を見ても見当たらなかったので残念だった。

百円の中古本を漁っていると、人にウケる本とかいうウケてなさそうな奴が書いた本を見つけたので読んでみると、目次からすぐの所に本に付属している栞が挟んであったので安心した僕はすぐに本棚に戻した。